幼児の性格形成に関して、4つの要因について触れました。特に「しつけの仕方」について、日本と欧米のやり方の相違に触れながら、しつけの在り方を検討してみたいと思います。
  日本のどの家庭でもよく見られるしつけの例で説明しましょう。4才のA君が何か悪いことをしたとする。それを見たおばあちゃんは、A君が明らかに悪いことをしたという事実があるにも拘わらず、悪いことを解らせるのではなくて『ああ、A君はいい子。いい子だからそんなことはしないよね』といって誉めている。
  このおばあちゃんのやり方は、A君にまず【自分はいい子なんだ】という【いい子アイディンティティ(主体性)】を持たせ、『いい子なんだからいい子らしくしなければ』と自己規制[つとめの意識]をさせるようにする方法を取っています。
  このようなおばあちゃんの仕方と同根の考え方は、14,000園ある日本の幼稚園のどこででも見られるやり方である。例えば、庭にいる子ども達を先生が室内に呼びいれている。けれどもどうしても室内に入らないで外に遊び続けるA君がいる。その場面で先生は他の子達に『Aちゃん、お砂場でもう少し遊びたいらしいよ。ちょっと待っててね』と言って待たせて、外で少しの間A君と一緒に遊んでやって、それから『さぁ、いいお山ができたから中に入ろうね』と連れてくる。その時先生は少しもA君を叱らない。そして【A君は悪い子ではなく、わからないだけなのです。わかるようにすればちゃんとします。】とこの先生は考えている。
  しかし、欧米の大人や親戚は、A君のおばあちゃんのような方法やA君の先生のような考え方を取らない。『A君、それは間違っています。こうしなさい』と、A君に自分の悪いことを直接的な罰を課して認識させ、直させる方法を取ります。
  欧米型の仕方は、幼児が『悪い子から脱却しよう。そのためにはどうすればよいか』という持って行き方だが、日本の場合は、子どもが【自分はいい子だ】という思い込み、『だからいい子にしなければ』と考え、次に当然【この場面ではいい子はどうすべきなのか】と自分から[つとめ]を探すようになる仕方である。この効果は日本の幼稚園では、次のような形で現れる。お母さんやおばあちゃんから言われてくるせいか、大部分の子どもは『幼稚園ではいい子にしなくっちゃ』という意気込みである。そして、【ここでどうするのがいい子かな】【どうするのがつとめなのかな】と自分の方から探している。つまり、先生の言うことを聞こうという構えになっている。だから、欧米では考えられないほどの数の子ども(文部省基準、4・5才児1クラス35名)を日本ではまとめて面倒をみることができるのである。
  次に、性格形成の4つの要因について、欧米と日本ではどうなのかと言う点について考えてみましょう。
  まず、価値観の定着点(しつけ)からみると、≪いい子アイディンティティ≫を求める日本では【しなくてはいけないこと】が重視され【してはいけないこと】は下位にされている。そのため、性格形成上重要な自己イメージの要因が希薄化されるきらいがある。一方「してはいけないこと」をしつけとして重視する欧米では性格形成上重要な自己イメージが特に重んじられ、≪いい子アイディンティティ≫は評価が低い。結果として、欧米型は、攻撃的・支配的傾向が強く、日本は逃避的・服従傾向が強いと言われている。
  しかし、最近の調査によると、40代以上(旧人類)とそれ以下の年齢層(新人類)とを比較した場合、前者は価値観が高いが、情緒の安定感が低い。一方後者は、情緒の安定感が高く、自己イメージは強いが、価値観が低いとされている。能力については特に指摘がない。つまり、戦後、子どもは大人によって大事に育てられ、性格形成の基本である情緒の安定感は高く、自己イメージ(いわゆるミーイズム・自分本位)も濃厚で、熱心な、しかしあまりにも恣意的(勝手気侭)な教育の中で能力も確保した。しかし【しなくてはいけないこと】と【してはいけないこと】を教える価値観(しつけ)の点で不十分であったと言わざるを得ない。
  そこで、不必要に肥大した知的能力のみをあおる風潮に振り回されず、伝統的な価値観【しなくてはいけないこと】加えて、もう一つの内容【してはいけないこと】を教える価値観を強化することで、より一層健全な幼児の性格作りに向かわなければならないと考えますが、子育て最前線におられる父母の皆様方は如何に考えるでしょうか。