私達大人が、乳幼児の成長に対して配慮する事の中で肝心なことは、健全な心身の発達・成長である。とりわけ苦慮することは、健全な性格の形成に関してである。そこで、一般的に性格はどのように形成され、いわゆる「しつけ」というのはどのようにして行われているのか、また、その問題点は何かについて触れてみたいと思います。
  教育心理学でいう「性格」とは、情緒・価値観・能力・自己イメージによる行動傾向をいいます。そして、この行動傾向は動機により規定されます。
  性格の形成上注目すべきは、先天的な要因(気質)は、1%、後天的な要因(情緒・価値観・能力・自己イメージ)が99%という事実です。性格の形成がほとんど後天的要因に負うとすれば、その情緒・価値観・能力・自己イメージとはどういうことなのでしょうか。
情 緒
  0才〜2才にかけてつくられる感情で、快感情と不快感情があります。この感情は世話をする大人によって作られます。つまり不快感情を快感情に変えてくれる(例えば、ウンチやオシッコを取り替えてくれる・空腹を満たしてくれる・あやしてくれる等)ことで、幼児に基本的な信頼関係が形成されます。しかし、不快感情が不快感情のまま定着すると不安が不満に変化して定着します。私達大人が期待するのは当然前者の方です。「三つ子の魂百までも」は、情緒についての諺です。この情緒形成期の幼児の特徴は、言葉、行動とともに自己表現の点では極めて不十分な状態にあり、生活の全てに渡って一方的に大人に依存している点にあります。蛇足ですが、近年になり、施工された育児休業制度では、子どもの生後1年未満までの休業を雇用主に義務付けましたが、私は、性格の基本要因である情緒の形成の点から、子どもが2才になるまでの、休業が、子どもの成長に妥当であると考えています。
価 値 観
  教育心理学では「理由のない思い込み」と定義づけます。
  この価値観も両親や祖父母等、幼児の回りにいる大人によって植え付けられます。この価値観の大人による意図的形成は、幼児が言葉を理解し、また使えるようになり、一程度行動もできるようになってから行われる特徴を持ちます。いわゆる「しつけ」です。ここでは「しなくてはいけないこと」と「してはいけないこと」が大人によって命令・指示され訓練が行われます。情緒の形成期に比べて、価値観の形成は、幼児の方に、言葉を聞いて少しずつ行動に移せる時期に行われ、幼児に命令や指示を受け入れていく受け皿の形成期に行われる特徴があります。
能 力
  ある動機付けで、〜ができる、〜を知っているという方が養われ、それを行動化・方向付けをして成果を獲得する力をいいますが、教育・練習で身につきます。この能力は幼稚園で行う分野になりますが、次の自己イメージとの関連で幼児自らの興味・関心を触発しながら進める必要があります。価値観の関連で言いますと、幼児の個体ごとの発達の差は6才までは大きいが、どの子も同じ発達の筋道を通ると言う点に留意しなければなりません。例えば、幼児が左右の認識を理解するのには4才半を待たなければなりません。それまでどんな命令・指示しても靴の左右履き違えを繰り返します。しかし、練習が無駄なのではなく、できる力を作っている過程であり、幼児本人の中にできる力がまだ十分に育っていないことを示しているだけです。4才半を迎えてそれができたとき、大人は、自分一人でできたような顔をしている幼児を前に、褒めてやるだけで十分だと思います。そして、その日を堺に幼児は迷子にもならなくなります。このような能力は、幼児の発達・成長のあらゆる分野に渡ることを注目しなければなりません。
  日本の子どもの性格形成上の特徴及び問題点は、特に現代では、幼児の知的能力といわれるもの(単なる技術)の開発及びその増進にのみ目を向けられているきらいがあることだと思います。情緒をベースに、価値観・能力そして自己イメージが程良くミックスされて性格は形成されなければならないと思います。
自己イメージ
次の4点を持っているとき、幼児は自己イメージを持っていると大人は理解します
   1)主体性がある
   2)単一性を持つ
   3)一貫性が保たれている
   4)自我の区別がある